"KSB"(Kochi Startup BASE)のジャーナル

【Part 2】こうち100人カイギ vol.8 柿谷奈穂子(日本茶インストラクター・リーダー)/河井舞(旅するリンパドレナージセラピスト)

2019年1月よりKochi Startup BASEにて始まった「こうち100人カイギ」。
高知の様々な分野で活動するゲストを、毎回5人お呼びして、生き方やその思いについて語っていただいております。全部で100人になったら、終了なこの企画。
今回は、2019年9月18日(水)に開催された、vol.8に登壇いただいた5名、1人1人の話にフォーカスを当てています。

8回目の今回は、高知県移住・交流コンシェルジュの方々に協力いただき、高知県に移住し活躍している5名の方にお話ししていただきました。
参加したくても参加できなかった方、この方のお話が聞きたかった、など様々な方に読んでいただければ幸いです。

<こうち100人カイギ vol.8の登壇者>
岡本 明才さん(Part 1掲載)

柿谷 奈穂子さん(Part 2掲載)
河井     舞さん (Part 2掲載)

川村       淳さん (Part 3掲載)
須江   勇介さん (Part 3掲載)

2人目の登壇者は、
日本茶インストラクター・リーダー の柿谷 奈穂子(かきたに なおこ)さん。

 

<プロフィール>

東京都出身。20代半ばに京都に移住した際、日本茶の魅力に惹かれ、その後日本茶インストラクターを取得。資格取得後は、「株式会社一保堂茶舗」で販売の傍ら、宇治茶道場「匠の館」でインストラクターとしての活動を行い、結婚を機に須崎市へ移住。
津野山農業協同組合にてお茶の販売や普及活動を行い、津野山ビールを企画。現在はフリーランスの日本茶インストラクターとして土佐茶のPRに取り組む。近年はお茶をテーマにしたイベント『ツノチャ・マルシェ』を企画運営している。

 

日本茶に目覚める
「私から出てくるのはお茶の話ばかり。」と、『私の土佐茶ライフ』と題したスライドを示し、微笑みながら話をはじめた柿谷さん。TVにも出演し、今や高知でお茶といえば、という地位を築き上げている彼女ですが、幼い頃からお茶が好きだったという訳ではなかったようです。
幼い頃、母親が茶道をしていたものの、自分はその抹茶を飲むだけで、お茶に対しては嫌いではないというくらいの印象だったと話しました。
人生の分岐点となったのは、25歳まで過ごした東京を出て、京都に移住した時のこと。京都で日本茶好きの男性、今の旦那さんと出会います。それから、日本茶カフェや、茶畑を巡って、という日々が訪れ、柿谷さんのお茶ライフが始まりました。

 

好きが仕事に
30代で日本茶のインストラクターの資格を取り、京都のお茶屋で販売の仕事をしていましたが、32歳のとき、結婚を機に高知県・須崎市に移住しました。
移住前に「高知もお茶の産地ですよ。」と聞き、実際に移住し、仁淀川や四万十川流域など、素敵な茶畑に出会って感動したと話します。
また、茶畑に訪問すると「お茶を飲んでいきや。」と勧めてくれる方や、茶畑の説明をしてくれる方など、土佐茶の生産者の方には親切な方が多く、訪問を繰り返すことで次第に仲良くなりました。知り合った人たちにお茶が好きなことを話していると移住してすぐに、インストラクターならばお茶の仕事をしたらいいのに、とお仕事の紹介などにも繋がることが。県から連絡をもらい、移住して3ヶ月ほどでJA津野山に所属することになり、土佐茶の普及活動を始めました。

 

 

高知の人に飲んでもらうには
高知県のお茶の生産量は全国で16位。全国的には知名度は低いですが、柿谷さんは移住して高知には茶畑がたくさんあることを知りました。
しかし、高知県はお茶の消費量は全国ワースト1位です。産地として有名な静岡の人が年間277杯飲むところ、高知県は40杯しか飲まないのが現状。柿谷さんが訪れた時の印象も、高知は作っても飲まない、買わない、という印象だったそうです。
関わったJA津野山でこういった土佐茶の現状を知り、県内どのお茶の産地でも毎年生産者が辞めていくことがとても悲惨だと感じました。
「どうしたら飲んでもらえるのか」、京都にいる時には考えたこともなかった疑問を考えていたとき、あることに気づきました。高知の人はお茶ではなく、お酒が文化圏であること。お酒を飲む場でお茶を飲んでもらうことはできないかと考え、『津野山ビール』を考案します。
津野町産のかぶせ茶の粉末をビールで溶かした緑色のビアカクテルは、気に入ってくれる方も多く、県内だけでなく全国で50店舗ほどに導入され、現在は東京ディズニーリゾートのホテルでも取り扱われるなど、少しずつその存在が広まっています。

 

自分にできることを提案する
農業協同組合では部署移動もつきものであるため、ずっとお茶の仕事をするためにフリーランスという道を選びました。仕事があるかどうか不安な面もあったものの、まずは自分がどのようにお茶に関わり、貢献できるかを洗い出してしました。お茶の淹れ方や、お茶についての説明・講座、販売の補助など、自分ができることを可視化し、その上で行政に提案。自ら1年契約でお仕事を提案するという特殊な方法をとり、3年間がたちました。現在は外部アドバイザーとして、津野町でお仕事をしています。

 

お茶を楽しむ
津野町での活動としては、津野山ビールの普及のために、『キリンビール』に放棄農園の整備事業の協賛依頼をしたり、『ツノチャマルシェ』というイベントを考案、運営したりと幅広く活動しています。
『ツノチャマルシェ』というイベントは、お茶の産地に足を運ぶ方が少ない印象だったことを踏まえ、たくさんの方とワイワイお茶が飲めるイベントにしたい、と考えたイベントです。入場時、オリジナルの試飲カップを500円で購入してもらい、出店している農家さんのブースで好きなだけ試飲ができるという少し変わったシステム。これは、普段生産者の方がお茶の普及のために試飲を頑張っているものの、試飲は自己負担、そして飲んでもらっても売れないという現状をなんとか打破したいと思いついた取り組みです。最後に、これからもお茶のいろんな飲み方、楽しみ方を頑張っていきたい、みなさんと一緒にお茶を普及することを楽しみたい、と締めくくってくれました。

 

 

3人目の登壇者は、
旅するリンパドレナージセラピストの河井 舞(かわい まい)さん。

<プロフィール>

1985年生まれ。静岡県浜松市出身。独身。鍼灸マッサージの専門学校卒業後、婦人科癌の後遺症である「リンパ浮腫」のセラピストとして神奈川県で就職。2009年 母の地元である高知に家族で移住。翌年、高知県で唯一のリンパ浮腫専門マッサージ院を開院。
現在は「旅する医療リンパドレナージセラピスト」として、1人でも多くのリンパ浮腫難民を救い上げるため、高知、東京、大阪、愛知、長崎など中心に活動中。

 

リンパ浮腫を知ってほしい
「みなさんはリンパ浮腫という病気を知っていますか?」という投げかけからお話は始まりました。投げかけに対し、手を挙げたのは40名近くいる会場の中でたった数名。「病気自体知らない方が多いです。調べてみてください。衝撃的な写真が出てきます。」と参加者にその場で調べるよう促し、話を続けました。リンパ浮腫は持続性の浮腫で、原因は2種類に分かれるそうです。ひとつは、原因がわからないもの、もうひとつは、子宮がん、乳がんといったがんの後遺症で出現します。現在河井さんは、後者のがんの後遺症として出現する浮腫のセラピストとして活動しています。河井さんの肩書きである『医療リンパドレナージセラピスト』は、資格はとっても活動している人は少なく、この職業も認知度は低いのです。

 

かかる費用と現実
次に河井さんは、参加者に自分の足を見せました。着用しているのは、リンパ浮腫の治療に使用するストッキングです。普通のストッキングは1,000円程度で購入できるところ、この日河井さんが着用していたストッキングは税込で32,400円します。もちろん1足を使いまわすことは不可能で、洗い変えなど考えると、このストッキングを履くだけで年間13万円かかってしまいます。加えて、リンパマッサージに、手術に、かかる費用を考えると、より一層リンパ浮腫の悪質さが伝わりました。しかし、リンパ浮腫はがんそのものが治っていても、その後に出現する後遺症なので、病院の先生も放置してしまうことが多いそうです。がんは治ったから、とリンパ浮腫のことも教えずに治療してくれないケースが全国的にも多い現状があると話してくれました。また、このようにストッキングを着用していたりすると、一見わからないので、健常者と同じように扱われるのがこの病気の辛いところ。実際に苦しんでいる方々に触れている河井さんだからこそ、その方々の苦しみをどうにかしたいと強く思っています。

 

 

苦しんでいる方のために全国どこへでも
『旅するリンパドレナージセラピスト』と名乗っている河井さん。医療リンパドレナージセラピストになったきっかけは、父親がリンパのがんだったからだと話します。父親は17年前に他界しましたが、その当時、父親も自分も「リンパって何?」と存在も知りませんでした。父親の経験を経て、リンパ浮腫という病気を知り、その道へ進むことを決意。
まだまだ認知度が低い病気のため、お医者さんが理解してくれなかったり、苦しんでいる方が多すぎたり、と現状は改善の余地が必要なことばかりですが、少しでも多くの方にこの病気を知ってもらえるようにと、河井さんは北へ南へと旅するように全国に渡って施術、治療を多なっています。

 

高知を好きになれなかった日々も
吾北地域に祖父祖母住んでいたこともあって24歳の時、孫ターンという形で高知県に移住しました。10年が経ちますが、高知に来てすぐは、高知が好きになれなかったと当時について話してくれました。友達もいない、知り合いもいない、何だか楽しくなかった日々。そんな日々が3年くらい続くものの、今は高知が好きになれたと笑いました。自分自身、出会いに億劫であったり、深い仲になれる友達ができなかったりと今でも悩むことはあるものの、その苦しかった3年間があることで、自分が力になれることもあるのではないかと思うそうです。「もし転勤や移住で高知に来て友達ができないと悩んでいたら力になれるかな。」と実体験も含めた上で話してくれました。

 

 

【総括】
結婚を機に高知に移住した柿谷さん。自分の好きなお茶と、その想いを武器に活動しています。話している姿からは、本当にお茶が好きなことが伝わり、自然と応援したくなるそんな気分にしてくれました。

一方、高知が好きになれなかったと正直な想いを打ち明けてくれた河井さん。自身も知らなかったところから始まった『リンパ浮腫』という病気を、少しでも多くの人に知ってもらいたいという熱い想いが、河井さんを動かしているのだと感じました。

内容は違いますが、どちらも伝えたいものへの熱い想いがしっかりと参加者に届いたようなお話しでした。

 

 

100人カイギとは
一般社団法人INTO THE FABRIC 高嶋 大介氏が「同じ会社に勤めていても、1度も話したことがない人がいる」と気づいたことをきっかけに、会社、組織、地域の”身近な人”同士のゆるいつながりを作るコミュニティ活動を始めました。 2016年六本木で「港区100人カイギ」スタートさせたのを皮切りに、渋谷区、新宿区、相模原市、つくば市、雲南市など全国各地へ広がっています。
100人カイギの一番の特徴ともいえるのが、「ゲストの合計が100人になったら会を解散する」ということ。100人の話を起点に、肩書や職種ではなく、「想い」でつながる、ゆるやかなコミュニティを作ります。

(レポート:上野 伊代)

 

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