"KSB"(Kochi Startup BASE)のジャーナル

【Part 3】こうち100人カイギ vol.3  矢野順也(三代目矢野金光農園株式会社 代表取締役)/横山公大(株式会社オルトル 代表取締役/株式会社土佐御苑 取締役/高知観光特使)

2019年1月よりKochi Startup BASEにて始まった「こうち100人カイギ」。今回は、2019年3月30日(土)に開催された、vol.3の様子をお送りします。

 

今回の登壇者は、カウンセラー、文旦農家、ITエンジニア・・・と全く別分野の領域で活躍する方々。しかし、どなたも自身から見えている現状に違和感を抱き、自ら変化させようという強い気持ちを持っておりました。1人、また1人と登壇が進むなか、熱が伝染するように登壇者の話にも熱が入り、その想いが会場全体に伝染していくような気持ちになりました。参加したくても参加できなかった方、この方のお話が聞きたかった、など様々な方に読んでいただければ幸いです。

 

<こうち100人カイギ vol.3の登壇者>

川村 祐奈 さん(Part 1掲載)

【Part 1】こうち100人カイギ vol.3

森田 久真 さん (Part 2掲載)

古味 由希 さん (Part 2掲載)

【Part 2】こうち100人カイギ vol.3

矢野 順也 さん (Part 3掲載)

横山 公大 さん (Part 3掲載)

 

4人目の登壇者は、

三代目矢野金光農園株式会社代表取締役/矢野順也(やのじゅんや)さん。

<プロフィール>高知県土佐市出身。2002年22歳で就農、温室文旦30アール・路地文旦100アール・路地生姜50アールを栽培。2010年温室文旦栽培を辞め、路地生姜100アールに増やす。もっと多くの方に文旦と土佐宮ノ内を知っていただきたく、2018年「三代目矢野金光農園株式会社」を設立。新たな取り組みとして、初代から続く味覚品質の研究を従来以上行い、果実の選定方法を見直し、味覚バランスが優れた文旦のみを選定した「金光文旦」をオリジナルギフト箱に入れ、「旅する文旦」をテーマに、大量に段ボール箱で届ける従来のスタイルから、ギフトとして届けるスタイルへ、1つからでも贈答品などとしてお届けできるよう、小売販売を展開している。

会社の設立

矢野さんの家は、元々文旦と生姜を作っている農家さんで、自分の代で三代目に。文旦発祥の地区で生まれ育った矢野さんですが、年月を重ね、大人になっていくとともに、地元の農家さんが減っていることを実感しています。その背景には様々な原因はあるものの、多くの農家さんがJAや市場に文旦を卸していることによって価格が安定せず、利益が少ない。文旦だけでは生活できないのが現状です。常にみてきた山が、どんどん荒れてきていることに「このままじゃダメだ!」と思い、昨年自ら株式会社の設立をしました。

 

映像で伝える

会社を立ち上げ、まず矢野さんはプロモーションビデオ(以後、PV)を作ろうと思いついたそう。今回、実際に会場でPVを流してくれました。高知県の農家さんでPVを作っている人がいないのでは、という意表をついたことももちろんですが、このPVを観てもらうことで矢野さんの文旦がどのようなところで育てられたか、文旦に対する矢野さんの熱い眼差しなどが感じられる内容に。お客さんの前で文旦や商品について自ら話すのも悪くはないけれど、このPVを観てもらっただけで雰囲気が伝わるようにと、知人に作成してもらい、現在は展示会などで使用していると話します。

 

時代のニーズにあわせて

文旦15〜20玉程度を段ボール箱に入れて販売する、従来の売り方に矢野さんは疑問を持ちました。少子高齢化、単独世帯や1人暮らしの増えた現代のニーズにあっていないのでは、そう思った矢野さんは、都心の方向けに一個入りの箱での提供を考えます。文旦をもっと多くの人に届けたいという思いから、ターゲットは都会の人に。文旦の現物だけでは広まらないと、女性が持ち運びやすく、また人にプレゼントして喜ばれるように、と考えられたデザイン。誰に届いても自信のあるデザインが施された黄色い箱には、自分の会社もPRできるようにと、矢野さんの会社の名前もしっかり記されています。

 

地域全体を盛り上げる

現在、矢野さんは文旦や生姜自体をつくる以外にも、文旦ジュースなどの加工品もてがけています。加工品そのものは、まだ個人でやっていることではありますが、ゆくゆくは地域全体で行なっていきたいそう。そのためには、まず自ら前に出て、個人で売り上げが立てられるようになること。そうなると、周囲の農家さんが「どうやったんだ。どうすればいいのか。」と自然に矢野さんの元へ訪れることに繋がり、地域みんなを巻き込んで行なっていけるのではと矢野さんは考えています。1人の力には限界がある、地域全体で行なった方がブランディングの効果が高まり、さらに価値が高まる、と想いを明かしてくれました。

 

文旦が1人でも多く広まるように

今後の展望として、自分の地域に加工場やショップを作りたいと考えていると話してくれました。加工品をつくるにあたり、高知県には加工場が少なく、また使用にも条件があるため、県外で加工を頼んでいる農家さんもいるそう。加工場を地域につくることができれば、価値も上がって、雇用が生まれ、農家さんの意識も高まるのではないかと矢野さんは考えています。また、ショップを作りたいことも同じ理由もあります。加えて、実際の文旦がなっている山や景色をみて文旦を食べてもらうことで、文旦をより美味しく伝えることができると考えています。「これは全て文旦が広まるようにしていること、そのために今奮闘しているところです。」と熱く語ってくれました。

 

 

 

 

5人目、最後の登壇者は、

株式会社オルトル代表取締役/株式会社土佐御苑取締役/高知観光特使

横山 公大 (よこやま こうだい)さん。

<プロフィール>高校中退後、料理の道へ。その後板前の修業をしながら定時制を卒業。1998年ニュージーランドのカールトンホテルNZに就職。2000年、家業である株式会社土佐御苑を継ぐために帰国。2011年全旅連青年部第20代青年部長を歴任、高知県観光特使を委嘱。2013年第一回旅館甲子園会長。2014年~土佐の「おきゃく」4代目実行委員長。2016年株式会社土佐御苑 専務取締役から非常勤取締役となり、株式会社オルトル設立。現在代表取締役。飲食店経営を中心にコンサル等も手掛ける。

 

「後継者」から「創業」へ

高知の老舗旅館の一つ「土佐御苑」の長男として生まれた横山さん。若い頃は板前として学びながら学校を卒業し、2年ほど海外に住み永住することも考えていましたが、母の大病をきっかけに27歳の時に帰国し、「後継者」として過ごします。今までたくさんの人が紡いできたものを守る覚悟も経験していく中で、自分には創業魂が足りないことに気づくことも。こうしていつか創業という道に進みたいと思うようになり、40の時に旅館業は弟に託したと話します。

 

 

「おもしろきこともなき世をおもしろく」

「高知にはまだまだ若者が活躍する場がなく、相手にされない風習がある」そう話す横山さん。その背景には、自身が過去に身をもって学んだ悔しい経験があるそうです。後継の道、創業の道と、自身でたくさんのことを経験し、成長していく中で、横山さんは一つのことを考えるようになります。

「あの若い頃に、失敗談や成功体験など、大人の経験話にもっと触れることができていれば。」そうすることで、若者がもっと活躍できる場が作れる、スピードアップできるのではないかと考えます。不平不満ばかりのつまらない大人もこの世にはたくさんいるが、その中でも光り輝くように面白い大人もたくさん存在する。その大人に子どもをあわせ、心の教育もしていけたらと横山さんは考えています。自身の経験や人脈を福祉の現場ではなく、これからの経済を支えていく若者たちに注ぎたいと。

 

 

教育現場に変化を

横山さんは、既存の義務教育にもう少し他のことも加われば、もっとこれからが変わっていくのではないかと話してくれました。なぜ義務教育の現場かというと、今学んだとしても結果が出せるのは40年先になる現状があるからと考えます。その中の一つには「お金」の話も。海外では「1ドルのチョコを5ドルで買ってくれる大人を探す」という、自らが増やせるようにと学ぶ世界になっているものの、日本で同じことをすると怒られる現状。使うことばかりの世界は、人口が減っていく中では良くないと横山さんは強く感じています。その思いから、酒と女とギャンブルと、といった教育の現場では決して語らないような話を中学校や高校などで話す活動もしているそう。子どもたちの反応もよく、もっと教育現場でそのような機会を作りたいと話します。

 

 

失敗から学んだこと

終始声高らかに話してくれる横山さんも、打ちひしがれ、自殺を考えたことがあると話してくれました。30代前半に参加したとあるイベントでの発言がネットに吊し上げられる状態になり、疑心暗鬼の日々が訪れます。好きなはずの婚礼の場でも、犯人を探してしまう不安定な状態になり、その帰り道、大雨の中傘もささずにこのまま車に轢かれないだろうかと街を歩いた横山さん。そんな折、知人に泣きながら電話をし、「もっと高知を元気にしたいと思っているけれど、僕のやってきたことは間違ってますか?」と問います。そこで相手から返ってきたのは、「今までお前みたいに元気なやつはおらんかったから、お前もへこめるんか。普通の男やったか。」という想像していない言葉たち。その言葉一つ一つに笑顔を取り戻すことができ、また知人の声かけで届いた全国各地の仲間たちからの激励の便りのおかげで我に返ったと話しました。当時は誰にも言えなかった思いでしたが、見る方向で世界は大きく変わっていく、乗り越えた先には笑って話せる状態が待っていたと、当時の胸の内を明かしてくれました。

 

どん底も、絶頂も知ったからこそ

創業の道を選び、2年目にして前年度の売り上げを1000%にあげることができたそう。しかし昨年、無計画に投資し、破産寸前まで追い込まれたことも包み隠さず話してくれました。一時危ない状態にはなったものの、なんとか回復。この経験で身をもってお金のありがたさや怖さ、そして必要性を知ったと話します。どん底も知って、絶頂も知った横山さん。この経験をこれから創業する人や、チャレンジを考えている人に提供していきたいと話します。最後に自らの経験を通して、「ただ勉強してもダメ、何かにチャレンジしないと。」と会場にエールを送ってくれました。

 

 

 

【総括】

矢野さんの文旦や自分の地域に対する思い、横山さんのこれからの人たちを応援したいという気持ち、どちらもとても熱い思いで、それが会場中に伝播していくのをこの目で感じることができました。

それぞれの思いが形は違えど、「何かを変えたい」という共通点で繋がり、今回集まってくださった5名の方々。今後の活躍にも目が離せません。

 

 

 

100人カイギとは・・・

一般社団法人INTO THE FABRIC 高嶋 大介氏が「同じ会社に勤めていても、1度も話したことがない人がいる」と気づいたことをきっかけに、会社、組織、地域の”身近な人”同士のゆるいつながりを作るコミュニティ活動を始めました。 2016年六本木で「港区100人カイギ」スタートさせたのを皮切りに、渋谷区、新宿区、相模原市、つくば市、雲南市など全国各地へ広がっています。100人カイギの一番の特徴ともいえるのが、「ゲストの合計が100人になったら会を解散する」ということ。100人の話を起点に、肩書や職種ではなく、「想い」でつながる、ゆるやかなコミュニティを作ります。

(レポート:畠中 詩織)

 

エイチタス株式会社高知支社(担当:畠中)

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