"KSB"(Kochi Startup BASE)のレポート

「行動と気づきで、プロジェクトが進化する」〜こうちマイプロジェクト道場第2期#5

 

 

こうちマイプロジェクト道場は、一人ひとりの本当にやりたいことを対話とアクションを重ねながら進める学び合いの場です。

マイプロジェクト(マイプロ)とは、「わたし」が感じている些細な問題意識や違和感、疑問に素直に耳を傾け、その「何か」を「プロジェクト(Project)」の形にして、「やってみる」ことから始まる、自分と仲間、世の中の変化を仲間同士で面白がり支え合う取り組みです。周りの目や評価を気にしないで、「自分の好き・やりたい」という想いに正直に向き合い、一歩踏み出すことを仲間と共に目指すことがこの講座の目的となります。

第2期では、自分らしい生き方で全国各地で挑戦を続けているゲストを迎え、彼らのストーリーを共有しながら、参加者一人ひとりの想いを掘り起こしていきます。

 

 

第5回目は本村 拓人さん(株式会社Granma 代表取締役社長)。

『行動と気づきで、プロジェクトが進化する』と題して、事業の経緯や、現在のチャレンジ、そして、志についてお話いただきました。

本村 拓人 氏(株式会社Granma 代表取締役社長)

<プロフィール>
生活者の想像力を掻き立て、関わりあう人の創造性が発揮される一区画”Creative One Block”を都市・地方へ宿すプロジェクトを多数展開。専門は地域経営・都市開発。

趣味は多拠点居住。特技は旅。

2009年株式会社グランマ創業。主にアジア8カ国にて地域開発・経営に従事。国内では東京と東北を往き来しながら、

秋田県南に位置する湯沢に”Fermentation City”を企画。また、同地域で発酵ギークたちが集う年に4回のカルチャーフェス(https://www.fermentators.com/)を企画運営する。都内では自由大学のディクレターとして複数の講義を担当。(https://freedom-univ.com/people/takuto-motomura/)また、世の中に新たな”思索”を提示するキュレーターとして世界を変えるデザイン展、Design For Freedom等、展覧会やムーブメントの企画を運営する。

基本的に個人の時代をいかに豊かに生きられるか?をテーマにRadicalな思想や発想をもつ先駆者たちを世界でおいかけ、複数メディアで執筆・寄稿する。https://bizzine.jp/article/corner/109

 

 

楽しいことしかやらない

人生グラフを見せながら、「人生いろいろあった」と語り始めた本村さん。16歳で起業家になることを決め、18歳で人材派遣事業を立ち上げた後、留学のため渡米。その期間中、インドからアフリカへと旅をしたときに抱いた問題意識から、途上国の貧困問題にビジネスで挑む「株式会社Granma」を起業し、様々な事業を行ってきました。

そんな人生の中で、自分が何をするのかという問いに対し、行きついた答えは「自分の『好き』を形にする」こと。以前の本村さんは、社会的に意義のある事業をしようとしていましたが、事業が成功して社会からの注目・称賛を浴びていた時、社内の実情は最悪で、精神的にもかなりきつかったという経験をしました。だから今はもう、自分が楽しいことしかしないと決めました。

「好きなことを見つけたらほぼ上がり」。そう語る本村さんが、人生をかけて追い求める「好きなこと」「楽しいこと」とは、一体何なのでしょうか。

想像力で世界を変える

途上国といわれる国々を旅してきた本村さん。貧困問題を目の当たりにする一方で、貧しいからこそ工夫されたデザインや仕組みに数多く出会い、感銘を受けます。そこで、そうした国々の先端デザインを集めた展示会『世界を変えるデザイン展』を主催。大きな反響を呼びました。

貧しい地域にはこのように、限られた資源の中で地元住民がアイデアをひねり出し、新たな価値を生み出す「グラスルーツ(草の根の)イノベーション」があちこちで見られます。本村さんはこういった草の根の“発明”を生かして、貧しい人たちにより多くの利益がもたらされる仕組みづくりを行ってきました。例えば、インドで発明された低コスト・生理用ナプキン製造機を、大手企業の手が届いていないフィリピンの農村部へと届ける事業などです。

貧困を考えるとき、本村さんがお金よりも重要視するもの、それは想像力。先に述べたグラスルーツ・イノベーションのように、お金や資源がなくても、想像力を起点に様々なソリューションを生み出すことが可能だからです。本村さんはこのことに気付いて以来、地域で生まれた想像力をテクノロジーやデザインで実現・普及させることや、豊かな想像力を持ち続ける大切さを訴えることを、自分の人生をかけた使命として、動き続けてきました。

 

最悪の時期

多くの企業や団体、政府機関と連携して、数十件のプロジェクトを進めてきたGranma。しかし様々な問題が行く手を阻み、収益化は難航します。例えば、宗教や文化の違い。現地の労働者はクリスマスの期間、とにかく遊ぶことしか頭にないので、働けと言ってもこちらの常識は通用しません。そんな時は向こうに合わせ、約2年と考えて回していかなければなりません。

いくら社会的に価値のあることをやっていても、これはビジネス。企業側から求められる数字の圧力に、現地にいるGranma社員は追い詰められていきました。ノイローゼになる社員も出てきた結果、本村さんは5人中3人を辞めさせざるを得なくなった上、そのうちの一人は創業時期から全身全霊、投げ打って支援してくれたメンバーという、つらい決断を迫られることに。

さらに、今までのほぼ全てを切り捨てて挑んだインドでの事業に失敗。2000万円の借金を抱えた本村さんは、キャンピングカーで9か月もの間、日本各地を回り、返済のため様々な仕事をすることになります。やりたくない仕事もやらねばならない日々に本村さんは憔悴し、うつのようになっていた時期もあったとか。その頃は事業を「好き」から切り離し、ミッションとしてやっていたので、精神的にきつかったのだと、のちに振り返ったときに気づいた、と本村さんは語ります。

発酵都市・湯沢での挑戦

そんなつらい時期の中にも、新たな発見がありました。今まであまり知らなかった日本の地域を、じっくり見ていくことができたのです。その中でも特に興味を持ったのが、東北・九州・北陸。その後、最終的に仕事をする場所として選んだのが、原発やインフラの未整備といった問題を抱えつつも、自然や歴史、文化、食といった希少価値を持っている東北でした。

さらに地域を絞るため、本村さんが用いた基準は「自分が住みたいかどうか」。そこでさらに良い暮らしをするために今何が足りないのかを考え、事業を通して環境を整えていくねらいです。そして選んだのが、秋田県湯沢市でした。

新潟の越後湯沢に知名度が負けているこの街を、どうブランディングし、盛り上げていくか。本村さんは、味噌や醤油など豊かな発酵食文化が残っているという個性に着目し、遊休不動産から老舗の商品・サービス、風習や伝統に至るまで、「あらゆるものを発酵させ、一人ひとりが個性を醸す街」として『発酵都市・湯沢』をつくっていこうと考えました。そして、まずは湯沢に来てもらおうと、“発酵”と“醸造”にこもる9日間のイベントをテスト的に開催することにしました。

クラウドファンディングで300万円もの資金が集まり、発酵イベントは無事成功。また、遊休不動産をホテルにしたり、古い醸造蔵を若者が集うクラブにしたり、地元のおばあちゃんたちが考案した発酵食を売り出したりと、面白い挑戦は続いています。地域のやる気ある人たちを世代関係なく集め、機会を提供してビジネスにつなげていく中で、個々が活性化していき、結果として湯沢が活性化する…そのようにして東北にたくさんの拠点を作っていけば、東北の未来に対する人々の見方はかわっていくはず。本村さんは、海外にいた時とはまた違ったやり方で、自分が楽しいと感じることを追及しています。

 

誰と、どこで、どう生きるか

本村さんはこう語ります。「堂々と自己中であればいい」。自己中とはわがままという意味ではなく、「誰と、どこで、どう生きるか」を明確にしている人だといいます。それが見つかれば幸せだし、探ることで人生に対する姿勢が変わってくるとか。

本村さんがその問いに対し、今、出している答えは、

 

-妻や子ども、事業で連携し続けてきた人たちと

-世界中に拠点を置いて移動し続けながら

-そこに住むという前提で、地域に欲しいものをつくっていく

 

ということ。

Granmaという船に乗り、荒波を乗り越えながら人生の航海を続ける本村さんの姿に、大きな刺激を受けたキーノートスピーチでした。

 

 

マイプロを通して得られた変化のシェア

次に参加者全員で、5回の講座を通してプロジェクトや自分自身に起こった変化、気づきについて共有しました。

 

ゲスト講師やほかの参加者、あるいは自分の身近な友達、家族の言動によって気持ちに変化が生まれ、それをきっかけにプロジェクトをブラッシュアップ出来た、という声が上がっていました。一方で、これからどう進めばいいかなど、新たな悩みが生まれたという意見もあり、参加者同士で励ましの声を掛け合ったりもしていました。

その後、年末も近いということで、来年の自分がどうありたいかを一言で表現し、シェアしました。

 

 

チェックアウト

最後は、チェックアウトと題して、一人ひとり今日の感想を話しました。

参加者からは、「本村さんのような生き方がこれからの当たり前になっていくだろうことに驚きを感じた」「これからも自分の『好き』を大切にしてマイプロジェクトを進めていきたい」といった感想が出ていました。

 

 

 

総括

自分が楽しいと感じることや、想像したより良い世界を、いかに実現していくか。その過程すら楽しみに変えて「自己中」に生きている本村さんは、一つの理想形のような生き方をしているように感じました。

一方でマイプロ道場の参加者も、5回の講座を通して、自分なりに「好き」を追い求めていたり、支えてくれる仲間を見つけたりできていて、それぞれがキラキラと輝き始めているように感じられ、振り返りを聞いていてとても嬉しい気持ちになりました。

自分だけのライフミッションを見つけ、楽しいことや好きなことを実現していく人たちが世の中にもっと増えていくよう、拠点となるKochi Startup BASEを発展させていければと改めて感じました。

 

(レポート:陶山智美)

 

主催:Kochi Startup BASE設立準備室

事務局:エイチタス株式会社 高知ブランチ

住所:〒780-0822 高知県高知市はりまや町3丁目3-3ガイアビル4F

Mail:ksb@htus.jp

Webサイト:http://startup-base.jp/

こうちマイプロジェクト道場第2期HP:https://select-type.com/ev/?ev=pcYnInrcQz0