"KSB"(Kochi Startup BASE)のレポート

一歩踏み出し、気づきを共有する
~こうちマイプロジェクト道場第2期 #4
 

こうちマイプロジェクト道場は、一人ひとりの本当にやりたいことを対話とアクションを重ねながら進める学び合いの場です。

マイプロジェクト(マイプロ)とは、「わたし」が感じている些細な問題意識や違和感、疑問に素直に耳を傾け、その「何か」を「プロジェクト(Project)」の形にして、「やってみる」ことから始まる、自分と仲間、世の中の変化を仲間同士で面白がり支え合う取り組みです。周りの目や評価を気にしないで、「自分の好き・やりたい」という想いに正直に向き合い、一歩踏み出すことを仲間と共に目指すことがこの講座の目的となります。

第2期では、自分らしい生き方で全国各地で挑戦を続けているゲストを迎え、彼らのストーリーを共有しながら、参加者一人ひとりの想いを掘り起こしていきます。

 

 

第4回目は阿部 裕志さん(株式会社風と土と 代表取締役)。

『一歩踏み出し、気づきを共有する』と題して、自身のライフヒストリーや変化のきっかけ、そして現在のチャレンジについてお話いただきました。

 

 

阿部 裕志 氏(株式会社風と土と 代表取締役)

<プロフィール>
1978 年愛媛県生まれ。京都大学大学院にてチタン合金の研究で修士号を取得後、トヨタ自動車の生産技術エンジニアとして働くが、現代社会のあり方に疑問を抱き、2008年海士町に移住、起業。島の魅力を高める地域づくり事業、島外の企業や自治体、大学の研修を海士町で行う人材育成事業、島産品の販売や海士町の魅力を発信するメディア事業を行う。田んぼ、素潜り漁、神楽などローカルな活動を実践しつつ、イギリス・シューマッハカレッジやドラッカースクール・セルフマネジメントなどのエッセンスを活用した研修プログラムづくり、JICAと提携し海士町とブータンとの交流づくりなど、グローバルな視点も取り入れながら、持続可能な未来を切り拓いている。

 

生きる力を高めたい!

生まれは愛媛、育ちは愛知。そして、今は島根県の小さな離島・海士町に移住し、地域づくりや人材育成の取り組みで脚光を浴びている阿部さん。しかも、前職はトヨタ自動車のエンジニアという、異色の経歴の持ち主です。

そんな阿部さんの原点は、大学受験に失敗した経験だと言います。当時の彼女と一緒に関西へ進学するはずが、阿部さんだけ落ちてしまったのです。悔しさのあまり家族や友達との付き合いも断ち、死にもの狂いで勉強したのですが、勉強のし過ぎによるストレスで、浪人生活開始からわずか3か月で内臓を患ってしまいます。

この経験から「人間ってこんなにも弱いんだ」と感じた阿部さん。また同じ時期に食料自給率問題に関心を抱き、食べられなくなる時代が来る、と直感したこともあり、「もっと生きる力を高めたい!」そう思うようになりました。

 

その後大学に入った阿部さんは、宇宙工学分野においてチタン合金の研究に従事する傍ら、「生きる力」を身に付けるためにアウトドアサークルと有機農業研究会に所属。自然の中へ飛び出し、探検や登山をしたり、野菜作りや家畜の解体をしたりといった土臭い遊びに没頭したと言います。また、バックパッカーとして海外を回ったりもしましたたそう。たくさんの経験を経て、「自分は本当にどこでも生きていけるんだ」と自信を付けました。

 

人と人、人と自然をつなぐ

自然の中へ足を運ぶうちに、阿部さんは一つのことに気が付きました。

それは、「人と人、人と自然のつながりの濃さ」。

普段街で暮らしているときに感じられる人とのつながりは、満員電車に乗っている時を想像すれば分かるように、とても希薄で殺伐としています。しかしひとたび自然の中に入ると、知らない人同士でもすれ違ったときに挨拶したり、場合によっては命を助け合ったりするような強いつながりが生まれます。

阿部さんは、「人と人、人と自然をつなぐ環境づくり」をすることで、本来人間に備わっている「人間らしさ」や「人を大切にする関係性」を残していきたいと考えるようになり、それを伝えるための手段としてペンションを営もうと考えます。しかし社会経験の無い状態で始めても、自分の言葉が伝わらないことは容易に想像がつきました。そこで、まずは世の中のことを学び、面白い人たちと出会うために、トヨタ自動車へ就職することにしました。

 

 

直感を信じて

トヨタで生産技術エンジニアとして新たな経験を積み始めた阿部さん。

ある日、同僚から「絶対気に入る、面白い所があるよ」と紹介されたのは、島根県の沖にある小さな島でした。なんでも、「島まるごとが持続可能な社会のモデルと言われている」のだそう。なんじゃそりゃ、と言葉につられて行ってみたその場所こそ、産業面・教育面で新たな動きが始まろうとしていた海士町でした。

実際に足を運び、「大人が本気の学祭をやっている。この島は本当にすごい」と感激した阿部さん。仲間に混ぜてほしいなぁと、移住を考える一方で、ペンション経営までの人生設計を立てていたため悩んだと言います。

もう少しトヨタで経験を積むか?それともコンサルに転職し、賢くなってから移住するか?いくつかの選択肢の中でどれを取るか、阿部さんは“全細胞を使って”考えました。結果、自分というスーパーコンピュータがはじき出した答えは、

「汗と涙と血を流し、経験した者勝ちじゃない?」。

その直感を信じ、4年間勤めたトヨタを辞めて、29歳で海士町に移住した阿部さん。以降、ペンションではなく島を舞台に、「人と人、人と自然をつなぐ環境づくり」に挑戦しています。

 

“未来の学校”海士町で目指すのは

本土からフェリーで3時間。人口減、少子高齢化、財政難…と問題は山積し、地域存亡の危機が迫っているという現実。けれど、そんな日本の離島に、日本の未来へのヒントがあると阿部さんは語ります。「未来の学校として島がある」という言葉通り、持続可能な未来へのヒントを学ぶために全国から仲間が集まり、少しずつその“環”は広がっています。

例えば、阿部さんたちが手がける事業の一つである「海士五感塾」では、海士町の農家や漁師から町長まで、島で生きる“師匠”が教壇に立ち、都会の企業から来た研修生たちの前で語ります。田舎に残る“人間力”と都会で磨かれた“仕事力”とが交換されることで、“人間味のある都会”や“新しいチャレンジができる田舎”がつくられていくと、阿部さんは考えています。

 

海士町での地域づくりや人材育成事業を通して、海士町を、そして日本を良くする人を増やす挑戦を続ける阿部さん。

-人を大切にする関係性を保ちながら、人間らしさのある幸せで持続可能な社会を、次の世代に残していきたい。

小さな島・海士町を拠点に未来を切り拓いている阿部さんのお話は、プロジェクトを形にし始めた参加者にとって、貴重な糧となったように思います。

 

 

プロジェクトのシェア

次に参加者3~4名でグループを作り、プロジェクトの現状や課題、いま解決したいことを語り合いました。

プロジェクトを進めていく中で新たな方向性が見えてきた人もいれば、なかなか思うように進まず悩んでいる人もいたりと、様々な想いを抱えていた参加者でしたが、お互いの状況を聞き合い、フィードバックをしあうことで、自らの事業についての理解を深め合うことができました。

 

 

チェックアウト

最後は、チェックアウトと題して、一人ひとり今日の感想を話しました。

参加者からは、「直感の大切さを学んだ」といった意見や、「プロジェクトの進捗をシェアしたことで、自分のやりたいことを見つめなおすことができそう」という感想が出ていました。

 

総括

「生きる力を高めたい」。そんな原点から、人と人、人と自然の強いつながりに気付き、今は海士町全体、そして日本全体の生きる力を高めようと奮闘しておられる阿部さん。難しい問題に挑みつつも、その表情はとても楽しげで、プロジェクトの第一歩を踏み出した参加者は勇気づけられたのではないかと思います。今までの経験がすべて自分につながっていること、その経験をもとに生まれた“直感”を大切にすることを、阿部さんから学ぶことができました。

マイプロ道場の期間中にも、参加者のプロジェクトや原体験、そして想いは随時アップデートしており、後半のワークではそれを仲間と共有することができました。様々な課題や悩みが生まれつつも、それらを糧として進もうとしている仲間の姿に刺激を受けた参加者が多かったように感じました。今回得られた気づきをもとに、また新たな気持ちでプロジェクトを動かし続けてもらえればと思います。

 

 

(レポート:陶山智美)

 

主催:Kochi Startup BASE

事務局:エイチタス株式会社 高知ブランチ

住所:〒780-0084 高知県高知市南御座90~1高知蔦屋書店3F

Mail:ksb@htus.jp

Webサイト:http://startup-base.jp/

こうちマイプロジェクト道場第2期HP:https://select-type.com/ev/?ev=pcYnInrcQz0

イベント詳細

こうちマイプロジェクト道場は、一人ひとりの本当にやりたいことを対話とアクションを重ねながら進める学び合いの場です。

今回は、自分らしい生き方で全国各地で挑戦を続けているゲストを迎え、彼らのストーリーを共有しながら、参加者一人ひとりの想いを掘り起こしていきます。

【マイプロジェクトとは】
マイプロジェクト(マイプロ)とは、「一人ひとりが自分とつながり、仕事とつながり、地域や世の中とつながり、一歩踏み出す背中を押す手法」です。

私たちは日々暮らす中で、 「漠然といつかはこういうことをしたい」といった想いや、身の回りで起こった出来事やニュースを見て不満を抱いたり、「もっとこうしたら良いのに」「どうして変わらないのだろう」といった違和感や想いを持ったりします。

 “マイプロ”は、そんな「わたし」が感じている些細な問題意識や違和感、疑問に素直に耳を傾け、その「何か」を「プロジェクト(Project)」の形にして、「やってみる」ことから始まる、自分と仲間、世の中の変化を仲間同士で面白がり支え合う取り組みです。
「本当のわたし」がずっと思い続けていた夢や好きだったけどいろんな理由で諦めてしまったこと、ずっと心の中に引っかかってたけど見てみぬふりをしたり、やり過ごしてきてしまったこと。社会や周りの期待や求めていること、自分が持っている知識やスキルはもちろん大事だけど、子どもの頃のように、周りの目や評価を気にしないで、「自分の好き・やりたい」っていう想いに正直に向き合い、一歩踏み出すことを仲間と共に目指すことがこの講座の目的となります。
慶応大学SFCの井上英之研究室からスタートしたマイプロジェクト手法は、現在、全国の大学教育、高校におけるキャリア教育のほか、起業家育成や企業の人材育成など、様々な場面で活用され、注目を集めています。