"KSB"(Kochi Startup BASE)のレポート

こうち100人カイギvol.5
~大切にしていることを発信する~

 

2019年1月からKochi Startup BASEでスタートした「こうち100人会議」。地域で働く100人をきっかけに、まちの在り方や価値を再発見し、ゆるく人を繋げる「100人カイギ」のルールは1つ。「ゲストが100名に達したら解散する」。毎回、高知で活躍する5名のゲストを招いて一人一人の生き方や仕事への思いについて語り合います。

 

今回は、2019年5月8日に開催されたこうち100人カイギvol.5の様子をレポートします。

 

 

 

オープニング

まずはじめに、100人カイギとKSBの概要についてモデレーターから紹介した後、アイスブレイクとして数人でグループを作り、自己紹介や今の気持ちのシェアを行いました。

今回は、これまで100人カイギに参加した方に加え、新たに大学生や高校生の参加も見られ、初めての空間に少し緊張している雰囲気もありましたが、アイスブレイクを通じて、緊張もほぐれた様子でした。

 

 

ゲストトーク ー各者各様の想いー

 

登壇者1 野崎 浩平 さん(高知学芸中学高等学校 教諭)

 

  <プロフィール>

1980年生まれ。大阪生まれ神奈川育ち。理科的な教育に関わってきた人。大学卒業後、講師として学校と予備校で授業を行う。その後、ベネッセコーポレーションへ転職し、小学生向け実験教室の運営・実施・カリキュラム作成等に携わる。ふとしたことから、2013年に高知へ移住。2018年より高知学芸中学高等学校で教員をしている。『生徒も私も一緒に考えて学ぶ。そうするうちに各自が考えて学ぶようになる』に挑戦中。学校と社会をつなぐ人であり、つながる場を作りたいと思案中。

 

 

ー「与えられた問い」から「自らが立てた問い」へー

高知学芸中学高等学校で、教諭として勤務している野崎さん。「先生」という仕事をする中で、自分も学びながら、子どもたちに伝えていきたいという思いがあると話します。自分自身の気になることを「一緒に考えよう」と生徒と向き合っていますが、そこには、「問いを持つことで、答えが答えではなく自分のものになっていくこと、答えではなく、それぞれが考えて導き出した解釈を子どもたちに持って欲しい」という強い思いが真意として込められています。そしてそれを実現するには、生徒との1対1の対話が必要と考えます。これからは学校だけで子どもたちの教育を行うことは難しいと考えている野崎さんは、自らがどんどん外に出て、問いを持つこと、考えていくことの必要性を直接伝えていきたいと今回の登壇に至った真意も語ってくれました。ちょっとしたことでもつながりを作っていこう、と野崎さんの活動は続きます。

 

 

 

登壇者2  立野 雄二郎 さん(高知大学協働学部2年生)

〈プロフィール〉

1998年生まれ。北海道室蘭市出身。幼い時から「笑顔」に囲まれて育ち、その影響で今の肩書「笑顔で人とコミュニケーションを取るエキスパート」と名乗るようになった。小学生から高校生までの12年間軟式野球に専念し、高校3年生の時には全国大会・国体に出場。初めての海外が高校1年生の時に言ったカンボジアで、そこから人生が変化。ユネスコ活動や学級活動、ボランティアなど多くのことに取り組み、大学進学を機に高知へ。現在は「おきゃく電車で社長呑み!」などのイベント開催を中心に活動中。

 

 

―笑顔は伝染病―

現在、高知大学協働学部2年生の立野さん。立野さんが自分の軸として大事にしているものは「笑顔」。そう思ったきっかけは、初めての海外でカンボジアに行った時に出会った子どもたちとの出来事だといいます。

日本から比べると決して裕福とは言えない暮らしの中、幸せそうに暮らし、一生懸命勉強している子ども達と関わることで、笑顔の大切さに気づいたと話します。

その出来事から現在の大学生活にかけて、海外への募金活動や、ネパール地震後の現状を伝える活動などを始め、自身のプロジェクトとして、「おきゃく電車で社長飲み」など幅広いジャンルで活動中。立野さんは様々な経験を通して、笑顔は伝染していくと感じています。今まで経験したどの活動も「みんなを笑顔にしたい」という思いから行なっていると力強く話してくれました。

 

 

登壇者3  田村 花枝 さん(三味線演奏・指導家)

 

〈プロフィール〉

1986年生まれ。高知県いの町出身の三味線演奏家。 中学生から三味線を始め、20歳で師範となる。 高知県下のイベントやクルーズの見送り演奏も担当し、よさこい祭りでは「旭食品」チームで三味線を担当。 国際交流活動として、「第23回世界青年の船」に参加。2015年にはアメリカ・フロリダ州のウォルトディズニーワールドで寿司職人として働いた経歴も持つ。 海外にも三味線や高知の民謡の魅力を広げるため、アメリカやドイツで定期的に文化交流イベントに参加。 演奏活動だけでなく、三味線部や教室での指導も行っている。

 

 

―可能性のお手本にー

高知県中心に、三味線の演奏者として活動する田村さんは、アメリカのディズニーで働いた経験があると話します。ゲストとしてパーク内のレストランで働き、その傍らでライブハウスや、ドイツで日本との交流イベントで三味線演奏した経験も。この経験を通じて、しばてんなど、高知の伝統的なリズムや音楽は、国境を超えて人の興味を引くということを感じ、もっとたくさんの方に同じように感じてもらえるようなきっかけ作りをしていきたいと、活動しています。

演奏家でありながら、指導家としても活動している田村さんが指導を行う上で大切にしていることは、

“三味線を教えて、その人のやりたいことを叶えること”

だといいます。自身のこれまでの経験を踏まえ、「私はこんなことをしていて、あなたもこんなことができるようになるかも」と伝えながら、「どう計画を立てて、どう上達していきましょうか。」と生徒と一緒に考えていくことで、一人ひとりに合わせた指導を行なっているとのこと。

自らお手本を示し、また、自分自身も常に新しいことに挑戦していく気持ちでいたい、と笑顔を見せてくれました。

 

 

登壇者4  森野 純夏 さん(高知大学協働学部2年生)

〈プロフィール〉

1999年生まれ。静岡県出身。母親が精神障害をもつことから、障害者福祉やマイノリティ、多様性の研究に励む。今年2月にユニバーサルマナーコーディネーター取得。 一方で、中学から始めた陸上を大学でも続け、昨年は中四国大会で優勝した。 旅行先では必ずランニングをし、”走りからその街を見る”ことを楽しんでいる。

 

 

―自分の思いを大切にするー

高知大学協働学部2年生の森野さん。今回、森野さんが登壇する上で、自身のバックに写したのは、幼少期から現在までの自分が写っている写真たち。しかし、その中には、小学生時代の写真がありません。小学生低学年の時、母親が精神障害を発症し、家庭が不安定になったから、と話します。家の中がギズギズしたり、家族で出かけたりすることもなくなった当時、他人の家が羨ましかったと心の内を明かしてくれました。この家庭での出来事を通じて、森野さんは世の中には「普通像」があると感じるようになったそう。無意識下で生じる、人の「普通像」。しかし、その中にはその「普通像」のせいで苦しんでいる人がいるのではと考えます。

森野さんは今、大学で色々なコミュニティに所属し、たくさんの人や価値観に出会っています。「普通像」を消すこと自体は難しいものの、その中で他人が思っていることも聞き、それを自分がどう思うのか、自分自身の感じる思いを大事にしていきたい、そう考えて行動していると話してくれました。

 

 

登壇者5  桑名 斉 さん(クチーナイタリアーナアッカ オーナーシェフ/日本イタリア料理協会会員)

 

〈プロフィール〉

1975年生まれ。高知市出身。
県内調理師学校卒業後、料理修行の為、2006年にスイスへ。
イタリアのまんまと出会い、イタリア料理の世界へ。
2008年現店オープン。日本イタリア料理協会シェフ会員。

 

 

―自分の料理に付加価値をー

クチーナイタリアーナアッカというイタリア料理店で、オーナーシェフを務める桑名さん。桑名さんが大事にしていることは

“自分が作り出す料理にいかに付加価値をつけることができるか”

ということ。

今はスーパーに行けば、プロが作ったのと同じような料理がいつでも食べられる時代。買ってきて混ぜるだけでできるように、魚や肉を捌けない料理人もいたりするといいます。

そんな中、桑名さんは両親が農家をやっていることもあり、自分で使う食材は、現場を訪ね、農家の方の仕事現場を自分の目で見て仕入れているそうです。そして、スライドににご自身の作った料理を映しながら、一つ一つの食材や料理を詳しく話す姿からは、桑名さんの料理への熱い思いが伝わってきました。

「野菜と肉」をテーマに、これからも出来るだけ「魅せれる」料理を作っていきたいと語ってくれました。

 

 

ネットワーキング

ゲストトークの後は、登壇者と参加者の交流の時間。こうち100人カイギでのネットワーキングは、登壇者と参加者が、できるだけたくさんの人とつながることを目指しています。

 

 

場のルールに沿って、登壇者を囲んで、一人ひとりが気づきや想い、考えを伝え合うネットワーキングの時間は、様々な反応が飛び交い、終始和やかな雰囲気で時間は過ぎていき、あちこちから笑い声や驚きの声が聞こえ、今回も活気あふれる時間となりました。

 

 

総括

今回のゲストは、自分の「大切にしていること」を誰かに伝えたい、と自らが発信源となって活動している方々が多かった印象があります。自分の気持ちにきちんと向き合って進んでいく、ゲストそれぞれの話を聞き、参加者の多くは「自分の大切にしているものは一体なんだろう」と考えるきっかけを与えてくれた時間となったのではないでしょうか。

登壇者も含め、若い世代や初めての参加者が多かった5回目のこうち100人カイギ。毎回毎回いろいろな発見や気づき、変化を感じさせるそんな時間となりました。

 

 

※100人カイギとは

100人カイギは、一般社団法人INTO THE FABRIC 高嶋大介氏が「同じ会社に勤めていても、1度も話したことがない人がいる」と気づいたことをきっかけに、会社、組織、地域の“身近な人”同士のゆるいつながりを作るコミュニティ活動です。2016年六本木で「港区100人カイギ」スタートさせたのを皮切りに、渋谷区、新宿区、相模原市、つくば市、雲南市など全国各地へ広がっています。

https://100ninkaigi.com

 

 

(レポート:畠中 詩織)

 

 

 

問い合わせ

Kochi Startup BASE

住所:〒780-0084 高知県高知市南御座90-1 高知 蔦屋書店3F

運営:エイチタス株式会社 高知支社

Mail: ksb@htus.jp

Webサイト:http://startup-base.jp/

イベント詳細

まちで働く100人をきっかけに、まちの在り方や価値の再発見を目的に、ゆるく人を繋げる「100人カイギ」
渋谷区を中心に開催されていた、このイベントが「こうち100人カイギ」として、2019年1月より、Kochi Startup BASEにて開催しています。
こうちで活躍するゲストを毎回5人お呼びして、働き方やその思いについて語っていただきます。